カラテア

カラテア

 マコヤナ歴およそ12年。害虫との戦いは8年目。いまだにカラテア初心者。

カラテア、植え替えまでの前置き

ファッシアータの植え替えをお届け。
前置きがいつになく長いので読み飛ばせます→ここから植え替え少し前に

 

 

カラテア・ファッシアータの諸事情も解消され、植え替えを予定していた休日。
朝から天気もよく、自分はソファの上でのんびりと過ごしていた。
今回も陽が傾いてから作業をしよう、と。
庭は先週すでに予約済みだ。

昼が過ぎ、陽が傾きはじめたころ空模様に異変が。
雷の音がしてきた。空も次第に暗くなってくる。
少しだけ心配になった。それでもまだソファの上でゴロゴロしていたのは、屋根のある作業場をあてにしていたから。

そろそろいい時間かなと腰を上げ、時計を見て少し慌てた。
予定していた時間より遅くなってしまい、猫と遊ぶ時間が減ってしまうというあせりを感じる。

荷物を愛車に積み込むため、大事なファッシアータを小脇に抱えるとなぜかテンションが上がった。
猫のおやつと土を買うため店に寄り、家路をめざした。
家が近づくにつれて、空は黒く雨足もひどくなる。

 

庭に愛車を停め、猫のおやつと土を持ち外に出るとちょうどプロ農家母が庭に出てきた。
タイミングよすぎて出迎えかと思ったけど、どうやら見舞いついで買い物に出るらしい。
会話もそこそこに会えるのを楽しみにしていた猫の名を呼ぶ。
庭に置かれたのダンボールの中からぴょんと飛び出してきた。
昼寝中だったようだ。今日もおっきなあくびをしていた。
わざわざ出てきたのかー!と感極まり買ったばかりのおやつを猫にあげる。

猫に夢中な自分にかまわずプロ農家母は車に乗り出掛けていった。 
かわいい、あーかわいい!とおやつを食べる様子を愛でてる間に、雨は勢いを増す。
バケツをひっくり返したような勢いに。

猫のおやつで少々汚れた手を、スレートの屋根から伝わった勢いのいい雨水で洗う。
庭からすぐそばの家に走って移動もできないほどの豪雨。
でも向こうの空が昼間のように明るかった。もうすぐ雨は止むと素人でもわかるほどの明るさ。


雨が止んでから作業しますかーと、猫と一緒に雨宿り。
木の椅子に腰掛け、膝の上をポンポンと叩くと、猫がぴょんと飛び乗り、ころんとまるくなった。これはプロ農家母が猫をしつけたおかげ。
なでなでしながら空を見る。
明るいせいかこの雨のなかカラスが飛んでた。
バランス崩してら、ハハと笑いながら猫なでなで。
猫は毛繕いをはじめ、時折ノミと闘っていた。
やべーこれ、なごむー
雨の音で聞こえなかったけど、猫の喉をなでるとぐるぐるくつろいでいるのがわかった。
 

毛繕いですごい格好になる猫を支え撫でながら空を見てぽかーんと多分、口も開いてたと思う。こんなにゆっくりした時間も久々だなぁと。

雨足が落ち着いてきた。
そろそろ愛車に積みっぱなしの大事なファッシアータと、コンビニで買ったアイスコーヒーの氷が溶けてるんじゃないかと気になりはじめる。
でも猫が膝の上から動かないので、動けない。

 

ぼーっとしていると、家のドアが開いた。
留守を任されたプロ農家父が、ひょっこり顔を覗かせた。どうやら雨の様子をうかがっている様子。
まだ雨は降っていたけど、ザーザー程度。さっきまでのように激しくはない。
プロ農家父は少し雨を気にしながら小脇に洗濯物のはいったカゴを抱え、雨に濡れながら干し場で猫と和んでいる自分のところへ来た。

洗濯カゴを抱えた姿にうっかり変なナレーションが浮かぶ。
ばーさんは車で買い物に、じーさんは洗濯物を干しに庭へ…
やばいこれ、リアルな昔話のはじまりだ、と思うとじわじわ笑えてきた。
しかも昔話と役割が逆なのもおもしろくて密かにニヤける。

 

庭を借りると連絡していたためか、猫をなでている自分にさして驚いた様子もなく、淡々と洗濯物を干し始めるプロ農家父。

ひざの上の猫が、自分のまわりをうろちょろする父を警戒して身を強ばらせ、前足に力を入れる。ひざに爪を立てられ「痛てッ!大丈夫だって」と猫を諭す。

洗濯物を裏返しのまま構わず干す父に、雨が止んだら作業するからドリルを借りると伝えた。
どこで作業するか聞かれたので、雨があがっても庭には水たまりがあるだろうと思い、今いるここではなく、家の前のひさしの下で作業する旨を伝えた。

あと30分もすれば雨は止みそうなほど空は明るく、確実にその範囲は広がっていた。
洗濯物を干し終えたプロ農家父が、干し場と続きになっている離れの倉庫でなにやらゴソゴソし始める。
「雨が止んでから自分で準備するからいいよ!」と伝えるも、構わずごそごそ…雨の音で声が届かない様子。
相変わらず膝の上で毛繕いする猫に身動きとれず、もうちょっと雨が止むまでこうしてようと思た。
前回のストロマンテ・マジックスターを植え替えたときの作業時間が参考になり、今回の作業時間を予想できたのが大きい。

 

予定だと、ここからファッシアータの植え替え準備をお伝えできたのですが、ここから親父の快進撃がはじまったので予定を変更してお届けします。 

自分で準備すると言った作業を、親父がはじめやがりました。
延長コードを取り出し、家の壁に付いているコンセントに差す。そのまま雨の庭をぴーっとコードを延ばし猫を撫でてる自分のもとに到着。
「いやだから、自分でするって」
話を聞かない親父に軽くイラッとする。

しかもここじゃなくて、家のひさしの下で作業すると伝えたのにここで作業させようとしてるし、雨まだ降ってるし、水びたしの庭に延長コード浸ってるし、雨のなか庭をうろつく親父も当然雨に濡れてるし、手を拭くようなタイプでないのできっと手も雨水にぬれたままだろうし。
電動ドリルを右手に、延長コードを左手に持つ親父に自分は言った。
「コードのタップが水に浸かってる、漏電するよ」

自分は確かに忠告した。
まーそんな忠告など聞くようなタマではないので親父は、ドリルとコードをためらうことなく繋ぎ、ドリルを始動した。

瞬間、ビクッと体を反射的に動かし、手から物を放り出す。
「ふぉおッ!!! Σ(゜Д゜;;;) 電気がきたッ!!」
「だから言っったじゃん!漏電するって!!」
滅多に聞かない親父の叫び声と動揺した表情に、大爆笑する非情な自分。
何事もなかったから自分大爆笑してますけど本来、笑い事じゃない。良い子のみんなは真似しないでね、というか大人も真似しちゃだめなやつです。


「すごい電気きた…」
しばし呆然とする親父に笑いが止まらない自分。
声出して笑うことなんてこっちも滅多にない。
「なんで漏電するってわかったかよ?」と不思議そうに問われたので
「どう考えてもするよ!雨だし濡れてるし!」
気持ちしょぼんとする父に、大事なことなのでもう一度言った。
「雨が止んでから、自分で準備するからいいよ」と。

親父は延長コードを持って、雨の庭を横切り家の方に戻った。
やれやれ、これで雨が止んでからゆっくり作業できる…と思って猫を撫でると、今度は家のひさしの下で準備をはじめた。

自分でするって言ってるのにまったく聞きやしない。
仕方ないので様子を見守ると、今度は水に触れないよう延長コードを設置、そしてドリルを取りにまた自分の元に来た、かと思いきや倉庫に戻りゴソゴソ。
再び現れた親父の手にはコウモリ傘が。
満面の笑みで
「傘があるの忘れてたw」
という親父にもう、爆笑しかない!!
「ちょっ、もうずぶ濡れなのに今さら傘をさす意味がッ」
申し訳ないけど笑いが止められなかった。

笑われてもめげずに傘をさし、親父はドリルを持って家のひさしの下に戻った。
電動ドリルが漏電せず今度はちゃんと動くか確認までできると、「準備できたどー!」と叫んでお知らせすると、部屋に戻っていきました。
残された自分は、あと少しで止むだろう空を見え上げ、膝の上の猫に語りかける。
「やべ、笑いが止まらんw」と。

 

雨足は止み、カラスとトンボが空を舞いはじめた。
ひざの上から猫がのくまではこのままでいようと思ってた矢先、猫は大きなくしゃみをした。
「大丈夫か?」と声をかけ見ると、猫の顔の先のズボンに鼻水の塊が。
これはさすがに拭かねばと、猫を下に置きようやく重い腰を上げた。
まずは鼻水を拭くためティッシュを取りに家に向かう。
タオルもきっと必要だ。家の中から作業に必要なものを失敬しようとドアを開けた。

ドアを開けた部屋の中央、親父がテレビの前に中腰で立ち両手を組み、前に突き出す不思議な動きをしていた。
「…なにしてんの?」←笑いをこらえる園芸素人
「猫背を治す運動よ」←真顔の親父
「もう、もう止めてくれ、笑いが止まらん!!」
「お前も猫背やろが、一緒に○×△…」
おもしろいことばかり繰り出す父の姿を直視できず、目を反らし急ぎ足でその場を後にした。
今日これ以上、親父にかまったらファッシアータの植え替えが終わらないと思った。

今日の親父はやばすぎる。
先週も実はこの親父、「スズメバチにふくらはぎ刺された。痛てかった、へへ」と笑いながら語りかけられてどうしようかと思いましたからね。しかも2箇所刺されたと言い張り跡まで見せられ、自分は「そうか…何度も伝えたけど、スズメバチ刺されるたびに症状がひどくなることがあるから注意しないと…」と脱力気味に伝えることしかできなかった。まったく聞きやしないけどね!
そしてスズメバチに刺されたの、何度目ですかね!

                                          


植え替えまでもう少し。
さて、ネタの尽きない親父に準備していただいた電動ドリル。ファッシアータの植え替えに一体どう関係があるかというと、鉢の底に穴をあけるためです。

諸事情というのが、ファッシアータのために購入しようと思っていた鉢が売り切れ→別の鉢を購入→植え替え前日、諦めきれずネットで売り切れの鉢を再度確認する→再入荷のお知らせ→ご購入→届くまで時間がかかった、という事情。
そして底穴なしのため、それじゃあ自分であけようと、どこのご家庭にもある電動ドリルを持ち出した次第です。

ようやく穴をあけるところまで辿り着いた。
愛車から鉢を降ろし、作業場へ。

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用意された電動ドリルを握り鉢底の中央、テキトーな位置に刃先を当てる。
少し回してすぐ作業を中止。

手が…ビリビリする。漏電か…親父を笑ってた自分が笑えない状況になる前に、ドリルとコードをタオルで拭いて、恐る恐る再開。

手に伝わるのは振動のみ、今度は大丈夫なようだ。
垂直を意識してドリルをガンガンまわす。

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作業の様子を見ていた猫が音の大きさにビックリして逃げるかと思いきや、距離をとりつつふつーに背後に。警戒心強いわりに音が怖くない様子。
鉢底の穴に水を追加したり写真を撮ったりと、ドリルを止めるたび猫がすりすり頭をすりつけ、構え撫でろ、と可愛い邪魔をする。

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さらには親父も家からひょっこり、
「穴は空いたかよ?」と何度も顔を出し邪魔をする。こっちは可愛くないので生返事で対応した。


数分後、手応えを感じドリルを外すと見事貫通した穴を確認。
さー次は植え替え…と思うも穴がちっちゃい、よね。と思いはじめる。
うーん…もう少し大きな穴がよさそう…
ドアを開け家の中の親父に問う、より先に親父が出てきた。
「もーちょい穴を広げたい。これより大きい刃ある?」
「あー?○×△□…」
わけのわからぬことを言いつつも、どうやらあるようで倉庫へ消えた。


すぐに替えの刃を持ってくるも、コレじゃない、もっと細いので広げてから大きいのでやる、と丁寧な作業で進めたい自分と、ちゃっちゃと終わらせたい親父とで言い争いになる。
「コレでやってみれ!できるから!」
「はー?できないってー!!」
やるまで納得しない親父に今日何度目かの苛立ちを感じながら、仕方なく太めの刃を当て、ドリル。
弾かれそうな手応えを力で抑えつつ、垂直におろしながら回す。

悔しいけどなんとか回せそうな感触に
「コレでやってみる…」と言い、うるさい親父を追い払った。
水をやりながら慎重に穴を掘り進めていく。
ようやく空いた穴に、ほっと一息。穴の大きさもまあまあ。

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これでようやく植え替え作業が出来る。

すっかり雨が上がり、気がつくと陽が落ちそうな頃。
前回の作業場に穴を開けた鉢と大事なファッシアータを並べた。
場所の移動にともない猫も一緒についてくる。
猫は水が嫌いなはずなのに、濡れた地面の上に座ってこっちを見ていた。
陽が落ちるまで時間がなくなったのでここらへんで心を鬼にして、植え替え作業に集中することに。

プラ鉢からファッシアータを引っこ抜く。
見てびっくり。
底の方にカビが!そして予想外の芋が!
まさか芋があるとは思わなかった。

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カラテア・ファッシアータ(2018/08)

輪郭のはっきりしない白い塊はカビです…。はっきりしているのは軽石
うわーこれ植え替え、もうギリギリだったなー…まさかこんなにカビが底の方にあったとは…でも芋は予想外だ。
しげしげ観察していると、車で買い物に出かけていたばーさんことプロ農家母が帰ってきた。


車から降りそのまま家に入るのかと思いきや、植え替え作業中の自分を見守りはじめた、というか勝手に話をはじめた。
ようやく辿り着いた植え替えに集中したいので右から左へと聞き流す。
とりあえず、じーさんが洗濯を干しに出てきたのに笑ったというとプロ農家母は真顔で、あの人は洗濯係だからねと答えた。
庭の害虫駆除係も担ってるようで、最近じーさんの係が増えているような気がする。

どうでもいいので植え替えを続ける。
水を張ったバケツにファッシアータを突っ込むと、カビの臭いがした。
うへぇと思いながらじゃぶじゃぶ洗う。
水は雨水を使い放題!土もその場に流し放題!なので作業が早い。

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カラテア・ファッシアータ(2018/08)

この状態になったファッシアータを見て、プロ農家母が一言。
「それ、栄養過多じゃない?」
「え?なにそれ?」
「肥料のやりすぎでも枯れるんだよ。葉っぱちょだい」
「えっ?枯れてるのはカビの…。葉っぱあげないよ、なにす…」
「それ真ん中からちょうど割れそうだね、割ったほうがいいんじゃない?」
「いや、植え替えだけの予定でってこれ株分けした方がいいの!?」
プロ農家の矢継ぎ早なアドバイスに動揺しはじめる園芸素人。
分けるとしたら、ここをこう、こうか?と悩む自分にプロ農家が言い放つ。
「知らない。観葉植物のことは専門外だから分からな~い」

専門外でも植物だいたい分かるだろ!と散々なアドバイスに心でツッコミいれつつ、残された自分は裸のファッシアータを握り締めしばらく悩んだ。

葉っぱがすでに3枚黄色くなりかけている。株分けどころではないと結論をくだし、穴を開けた鉢に土を詰めはじめた。

 

うちのファッシアータ、ご覧のように上に長い。
根本を片手で掴んで土をその周りに詰めるもうまくできず、ファッシアータを壁に立て掛けて作業ようと試みる。
も、鉢が丸くて壁とファッシアータの間に大きな開きが。
うなりながらちまちま土を詰めているとそこに救世主が現れた。

本日の主役!そう、親父。
でもまったく望んでいた助っ人でなかったため
「ちょ、自分でやるから手伝いいらない」←追い払おうとする
「持っててやるから、はよ土を詰めんか!」←ヒマですることない
正直、ファッシアータを支えてもらってると作業しやすいので、ぶつぶつ言いながらも手を借りることにした。

なんかと土を詰めると、またプロ農家親父が口を出す。
「土を締めんと、水をやったら土が減るぞ」
「わかってるよ。なんかそこらへんの棒とかあればやるから」
箸サイズの棒を求めたところ、親父が差し出したのはシャベル。
業務用というか、足を掛ける部分があるあの大きなスコップ。
「そい、この柄でやれ」
「できるか!まず、鉢に入らないよね!」
ファッシアータ潰す気か!と遠慮なく怒りをぶつけると、今度はハサミを持ち出した。
「そい!このハサミの柄で…」
枝切りバサミの柄で、土を締めろと。刃を持つの?つーかその枝切りバサミも両手で持つでかいサイズすぎるわ!!刈るつもりか!!
「笑わせないでくれますか…」
静かな怒りをぶつけると、親父はようやく探した手頃な棒を手渡し、照れ笑いながら消えていった。

最後までやらかしてくれた親父に次第に笑いが出てきた。 

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カラテア・ファッシアータ(2018/08)

長い道のりだったな…。
雨さえ降らなければ、ファッシアータを植え替える話はここまで長くならなかった気がする。
庭での植え替え作業は短時間で済むけど、結局邪魔が入り、休日の貴重な癒しの時間が失われてる気がしてならない。

庭に出ててくるのは猫だけでいい、しみじみそう思った。